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リレーエッセイ Vol.129 freee株式会社 代表取締役  佐々木 大輔さん

思えば、いつも「隣の芝生は青い」ように見え、自分の知的好奇心が刺激されるほうへと進んできました。

大学の経済学の授業で、「ギャンブルをする人の効用曲線」を学び、人の行動を数値化することに面白さを感じてデータサイエンスに興味を持ったことから、3年生の時にマーケティングリサーチの会社にインターンに行きました。そこでは実際に、消費者行動のデータ分析や新しい調査手法開発などに携わらせてもらいました。卒業後は博報堂に入社し、その後は、投資ファンド、Googleと転職。特にGoogleでは、全社的な方針がどんどん変わっていくので、臨機応変にハンドルを切っていくことが求められたため、「何でもやってみなければわからない」という柔軟な思考を培うことができました。

「クラウド会計ソフト freee」の構想は、Googleで中小企業向けサービスに関わっていた際に、「日本の中小企業のテクノロジー活用度が先進国の中でも極端に低い」という事実に問題意識を持ったことが起因しています。テクノロジーの進展に伴い、広告の場合は安価なWeb広告なら中小企業でも手軽に出せるようになりましたが、町の本屋さんのようなところではWeb広告の効果は得にくい。そこで、もっと普遍的になれるビジネスを考えていた時、以前自分が勤めていた会社で、優秀な経理担当者が入力業務にとても時間をとられていたのを思い出しました。もっと誰でも簡単に会計業務ができるソフトを作れば、手間もミスもなくなり、入力以外のことに時間を割ける。さらには専門知識がなくて起業を躊躇していた人の後押しもできる。会計のようなすべての中小企業で必要とされる部分で、テクノロジーを活用できれば、自分が捉えた問題も解決に向かうのではないか。そんな思いから、「freee」は生まれました。私自身は会計士の資格を持っているわけではありませんが、だからこそユーザー目線で、これまで慣習としてあった“当たり前”を疑い、問題を意識することができ、以前までのやり方に風穴を開けることができたのではないかと思います。

freeeのリリース以降、テクノロジーやクラウド分野、ベンチャー投資などを国が重要視する動きが顕著になり、意見を求められることもあります。最近では、少しずつですが世の中を前に進める“ドライバー”になっているという実感が湧いてくるようになりました。今後はさらに、ビジネスを行う上で必ず必要とされる煩雑な業務をクラウドで完結できるようにしていきたい。そうしたイノベーションの結果、一人ひとりが本当にやりたいビジネスに集中できれば、起業する人も増え、大企業とベンチャーとの力関係の逆転が起こせるような社会になることで世の中がもっと面白くなると思っています。

私にとって働くことは、「問題解決」。解決することでいろいろな人の役に立ち、仕事を通じて世の中に新しい価値を生みだしていく ――。現在は、中小企業のバックオフィスの全自動化に注力中ですが、これからも、“ユーザーにとって本質的に価値がある”と自分たちが信じることを、知的好奇心の赴くままに取り組んでいきたいです。

仕事にまつわる10問アンケート

  1. 今の仕事が好きですか?

    好きです。

  2. 一生困らないほどのお金が手に入ったら、仕事以外にやりたいことは?

    お金にならなそうな研究をしてみたい。例えば、教育分野など。

  3. 仕事で、“鳥肌が立つほど感動した”ことがありますか?

    偶然、まったく知らない人や以前の知り合いから、「freeeを使ってます」ということを聞いたとき。
    最近は、「自宅で経理業務ができるので、freeeのおかげで産休中でも働けています」というSNS経由の声も多く、働き方の可能性を拡げていることを実感でき、会社の存在意義が感じられてとても嬉しいです。

  4. 仕事より大切なものは?

    知的好奇心が満たされること。結局、仕事かも…(笑)

  5. 子供の頃になりたかった職業は?

    美容師。祖父の代から続く美容師一家だったので。

  6. あなたの子供に、仕事のためにどのようなことを身につけさせたいですか?
    (※ 子供をお持ちでない方は、いると仮定してお答え願います)

    本質を見抜く力。それと、仕事には自信と謙虚さのバランスが必要なので、
    そのためには、勝ちも負けも含めたさまざまな経験を積み重ねることも大切だと思います。

  7. あなたの仕事にとってコンピュータとは?

    自分を拡張する媒体。可能性を広げてくれるもの。

  8. 仕事で成功するために、もっとも大切なことは?

    “世の中のこういった問題を解決したい”という社会的な側面から取り組める目標を掲げること。
    仮に、“お金を増やしたい”を目標にすると、お金を失いたくないという気持ちが先立って大胆な意思
    決定や長期的な発想がもてない。目標が問題解決なら、例え失敗しても、「このやり方だと失敗する」というモデルケースを世の中に示すこと自体が価値になります。

  9. 今、1時間だけ自由な時間があったら、何をしたいですか?

    今日みたいに天気が良いと海に行きたいところですが、1時間だと足りない(笑)
    普段読まないようなジャンル、例えば少女マンガなどを読んでみるのもよいかもしれません。

  10. 最近読んだ本で、仕事に役立ったのは?

    『タイタンズを忘れない』[1971年の実話を元にした2000年の米国映画]
    本ではなく映画ですが、とても良かった。白人と黒人混合の高校のフットボールチームが、人種差別を乗り越えて成長していく様は、組織経営の視点から見ても参考になりました。

【2015年8月インタビュー】

freee株式会社 代表取締役
佐々木 大輔(ささき・だいすけ)

【Profile】

1980年生まれ。一橋大学商学部卒。専攻はデータサイエンス。大学在学時より、インタースコープ(経営統合を経て、現在はマクロミル)でインターン/契約社員として、リサーチ集計システムや新しいマーケティング調査手法を開発。
2008年にGoogle入社。日本およびアジア・パシフィック地域での中小企業向けのマーケティングチームを統括し、同地域での中小企業におけるオンライン広告プロダクトの浸透に大きな実績を残した後に、2012年7月にfreee株式会社を設立。Google 以前は、広告代理店の博報堂を経て、投資ファンドのCLSAキャピタルパートナーズに転職。同社での投資アナリストを経て、レコメンドエンジンのスタートアップのALBERTに転職し、CFOと新規レコメンドエンジンの開発を兼任していた。

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