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リレーエッセイ Vol.44 志賀こず江さん

高等学校を卒業して最初に就職したのは航空会社でした。家庭の事情で、大学進学が叶わず、将来に夢を失った18歳の女子高生が、少しでも華やかで変わった仕事につきたいと切望して、客室乗務員の職を得ました。小さいときから乗り物酔いのひどかった私でしたから、これを知った祖母は仰天しました。

2年ほど乗務の後、21歳で結婚しました。小学校6年の3学期、大盤振る舞いの通信簿で唯一成績が悪かったのが家庭科だったという私が、その若さで主婦になり、間もなく主婦暦は40年近くになろうとしています。

結婚して4年後、大学の通信教育を受け始め、卒業後から司法試験にチャレンジしました。机の前にじっとしていることが苦手だった私が、主婦業と家族の介護の傍ら、13年間も受験勉強を続けたのです。

合格後2年間の修習を経て、横浜や東京の地検で検察官として勤務しました。怖がりの私は、報道番組や写真週刊誌等の凄惨な現場写真などは全く正視できなかったのですが、解剖報告書の写真を重要な証拠として精査することはもちろん、実際に解剖そのものにも立ち会うようになりました。

その後弁護士登録をして現在に至っています。弁護士というのは、対立する当事者間の紛争を解決する仕事です。他人と争うことは、もっとも私の嫌いなことでした。
好きなことを仕事にできたら楽しくて、きっと働き甲斐もあるに違いないと皆思っています。でも、そういう仕事に就ける人はほんの一握りです。大半の人は、私のように苦手を必死で克服しながら懸命に働いています。
でも、その結果、思いがけない自分の才能に気がつくこともあり、また、人生の広さや深さが増すこともあります。何ごとにもひるまず、果敢に挑戦ということでしょうか。

仕事にまつわる10問アンケート

  1. 今の仕事が好きですか?

    人生の一大事を抱えた方のサポートが仕事ですから、好き嫌いは言えません。

  2. 一生困らないほどのお金が手に入ったら、仕事以外にやりたいことは?

    経済的な理由で教育を受けられない子どもたちに好きなだけ勉強をさせてあげたい。

  3. 仕事で、"鳥肌が立つほど感動した"ことがありますか?
    それはどんなときですか?

    犯罪被害者の遺族と加害者との間で損害賠償について和解が成立したとき。

  4. 仕事より大切なものは?

    健康。

  5. 子供の頃になりたかった職業は?

    着ぐるみを着て遊園地で踊る人か小説家。

  6. あなたの子供に、仕事のためにどのようなことを身につけさせたいですか?
    (※子供をお持ちでない方は、いると仮定してお答え願います)

    常識と思いやり。

  7. あなたの仕事にとってコンピュータとは?

    書類作成と情報収集になくてはならないもの。

  8. 仕事で成功するために、もっとも大切なことは?

    真面目であること。

  9. いま、1時間だけ自由な時間があったら、何をしたいですか?

    飼い犬とひなたぼっこ。

  10. 最近読んだ本で、仕事に役立ったのは?

    『農地制度 なにが問題なのか』
    [高木賢 著/大成出版社]

白石綜合法律事務所
弁護士 志賀こず江(しが・こずえ)

【Profile】

1948年東京生まれ。高校卒業後、日本航空の国際線客室乗務員として約2年間勤務したのち、21歳で職場結婚をし、退職。専業主婦になり、慶應義塾大学法学部通信教育課程で4年間法律を学ぶ。
1990年司法試験に合格。
1993年検事に任官。横浜地検、川崎支部、東京地検を経て、1998年に退官、弁護士登録(第一東京弁護士会)。

【著書】
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