エンドユーザーのためのICTリテラシー

表紙:教養としてのコンピューターサイエンス抗議

プリンストン大学 ブライアン・カーニハン教授の『教養としてのコンピューターサイエンス講義』という本が話題です。
ブライアン・カーニハン氏といえば、AT&Tベル研究所に在籍し、デニス・リッチー氏とともにC言語の開発に貢献したとして有名です。C言語を勉強したことがある人なら、カーニハン&リッチー(通称K&R)の名前は誰もが知っていることでしょう。その著者が1999年から約20年もの間、内容をアップデートしながら続けたプリンストン大学での人気講義をまとめられた書籍で、多くの著名人が絶賛しています。

この本の中では、次のようなことが書かれています。 コンピューターの性能は飛躍的に向上し、私たちの身の回りにあるあらゆる機器にコンピューターが組み込まれ、便利になっている。一方で、私たちは日々監視され、知らないうちに、個人情報が脅かされている。私たちが生きるデジタル社会における3つのコア技術は、ハードウェア・ソフトウェア・コミュニケーションである。そのうえで本書は、第1部 ハードウェア、第2部 ソフトウェア、第3部 コミュニケーションの3部で構成されており、いくつかのデジタル技術と、その技術が生まれた時代背景やしくみ、またなぜそういうしくみになっているのかがわかりやすく書かれています。

日本の国家試験である情報処理技術者試験にはいくつもの試験があります。エンジニアが身につけておくべき基礎知識を問う試験から、高度な技術力を有することを証明する試験まで、時代の流れにあわせて試験体系を変えながら実施されていて、現在も多くのエンジニアが受験しています。

ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークの基礎については、情報処理技術者試験の「基本情報技術者試験」、その前身の「第二種情報処理技術者試験」で学ぶことの多くが、この『教養としてのコンピューターサイエンス講義』にも書かれています。このことは、20年以上の時を経ても、エンジニアが学ぶべき基礎は変わらないことを感じさせます。

一方で、新しい技術についても書かれています。インターネットが広がり、街中では誰もがスマートフォンやタブレットを手にしています。あらゆる機器にセンサーと無線機能が搭載され、インターネットやクラウドに接続されるIoT化が進んだ今、ユーザーが晒されているリスクやしくみ(手口)、さらに、どのような事態が起こりうるのか、具体的な事例や著者の体験談を交えて解説されており、利便性と自分の情報を守ることのバランスについて考えさせられます。

テクノロジーは目覚ましいスピードで進化し続けています。エンジニアは常に新しい技術について学び、その技術によって得られるメリットとリスクを正しく評価できる能力が必要です。そして、システム開発においては、状況に応じてもっとも適切なソリューションを選択して、実装していくスキルが求められることでしょう。

一方で、システム開発を生業としていないユーザーは、必ずしもエンジニアのような高度なスキルを必要としません。私たちに必要なのは、次々と生み出される新しい技術を正しく理解して、自分の身を守りながら便利に使いこなす、見識とスキルです。 また、仕事をするうえでシステム化が必要になってきたときは、業務の中にある課題を分析し、要求を整理して、どのようにシステムで実現されればよいかをイメージする力、エンジニアに正しく伝える力が求められています。

情報処理技術者試験がその名のとおり、エンジニアのための試験であるとするならば、私たちには、「IC3(アイシースリー)」という資格試験があります。 IC3は、学校や職場に限らず、すべてのエンドユーザーが身につけるべき、基本的なデジタルリテラシーを体系的に学べるようにカリキュラムされています。ブライアン・カーニハン氏が3つのコア技術を挙げていたように、IC3は「コンピューティングファンダメンタルズ」「リビングオンライン」「キーアプリケーションズ」の3つの試験科目で構成されています。

IC3概念図

コンピューティングファンダメンタルズ

1つめは、コンピューターのハードウェアに関する試験科目「コンピューティングファンダメンタルズ」です。
今や、パソコン、スマートフォン、タブレット、ゲーム機などの端末を誰もが利用するようになりました。こういったデジタル機器に幼いころから親しんできた「デジタルネイティブ」といわれる世代には、意外にも、パソコン操作に不慣れな人が多いそうです。しかし、仕事をするうえで、パソコンは必須のツールと言えるでしょう。
コンピューティングファンダメンタルズでは、パソコンのしくみ(アーキテクチャ)と基本操作から、近年急速に発達してきたクラウドサービス、Webアプリケーション、モバイルコミュニケーションの利用について学びます。
コンピューターを安全に使うための知識(ユーザー管理、パスワードの設定、ファイル共有とアクセス権)や、コンピューターを良い状態で使い続けるために維持・管理するスキル(OSのアップデート、スキャンディスクや最適化、バックアップの方法)についても網羅されています。また、コンピューターが不調なとき、その症状から、どこに原因があるかを判断して回復するトラブルシューティングや、コンピューターウイルス・マルウェアの脅威とその被害にあわないための対策なども学びます。
このように、コンピューティングファンダメンタルズでは、エンドユーザーがコンピューターを安全に利用するうえで知っておくべき知識とスキルを学ぶことができます。

リビングオンライン

2つめは、インターネットやコミュニケーションに関する試験科目「リビングオンライン」です。
リビングオンラインでは、インターネットのしくみ、データ伝送、Webブラウザーの利用方法について学びます。多くの情報を簡単に手に入れ、発信できる時代だからこそ、情報を正しく取り扱うスキルや、知的財産権の知識なども必要になります。
また、電子メールやスケジュールなど、仕事で利用するツールや、SNSを利用したオンラインコミュニケーションについても学びます。
SNSの普及はめざましく、メッセージとともに写真や動画を共有するといった、楽しみを中心するサービスだけでなく、クラウドファンディングや決済サービス、Web会議など、ビジネスの世界にも広がりを見せています。
新しいサービスが次々と生まれ、それらを利用する一方で、私たちはデジタル社会のルールやモラルも身につけておかなければなりません。ユーザーが簡単に使えるように作られたサービスは、ともすると学ぶ機会がないままになりがちです。トラブルに巻き込まれることなく安全に利用するためには、リビングオンラインのカリキュラムにそって学ぶことが効果的です。

キーアプリケーションズ

3つめは、アプリケーションの操作方法に関する試験科目「キーアプリケーションズ」です。
コンピューターの性能は向上し、世の中にはさまざまなソフトウェアがありますが、仕事をする上では、欠かすことのできないスキルがあります。なかでもワープロソフト、表計算ソフト、プレゼンテーションソフトの操作はその代表といえるでしょう。また、ビックデータの時代、私たちエンドユーザーも大量のデータを手にすることが可能になりました。それを活用するには、データベースの基本概念も身につけておきたいもののひとつです。
キーアプリケーションズでは、もっともよく利用されているMicrosoft Officeを例に、アプリケーションの使い方を学びます。
Wordによる文書作成、Excelによる集計やグラフ作成、PowerPointによるスライド作成やプレゼンテーション、Accessによるデータベースの構造や概念について学ぶ中で、これらのアプリケーションに共通する機能、アプリケーション固有の機能などを学ぶことができます。そうすることで、状況に応じてどのアプリケーションのどの機能を使えばよいか、的確に判断できるようになり、業務効率が向上します。
キーアプリケーションズでは、アプリケーションを利用する上で必要な知識をバランスよく学ぶことができます。

このように、3つの科目で構成されているIC3は、「時が経っても変わらず、身につけておくべき内容」と、「現在進行形の技術やサービスで、今わたしたちが知っておくべき内容」をバランスよく学ぶことができる資格試験です。

この試験を受験するための学習プロセスを通して、デジタル社会で身につけておくべき基本的な知識とスキルを習得できます。学習には「デジタルリテラシーの基礎」シリーズの3冊の書籍がおすすめです。本シリーズは、IC3の試験対策だけでなく、デジタルリテラシーを体系的に学ぶのにも最適です。

デジタルリテラシーの基礎シリーズ(IC3 GS5対応公式テキスト)

コンピュータの基礎知識
インターネットの基礎知識
アプリケーションソフトの基礎知識
IC3

IC3(アイシースリー)とは

IC3(アイシースリー)は、コンピュータやインターネットに関する基礎知識とスキルを総合的に証明できる国際資格で、世界78か国、19の言語で実施され、世界的なデジタルリテラシー標準として認知されています。累計受験者数は500万試験を突破。企業では社員・内定者研修に、教育機関ではITスキルの証明として授業や課外講座に活用され、高等学校普通科の必履修教科「情報」の約9割を網羅しています。

詳しくはIC3(アイシースリー)の公式サイトへ
https://ic3.odyssey-com.co.jp/

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